衆生クランケ

病めないでカミサマ

処方箋は幾らでも在るの

ほら、カミサマはちゃんと開眼してるでしょ？

あの向こうの線路で女の子が立ち尽くして居るの、

何か待ってるみたいだから、

ちゃんと診てやってカミサマ。



「頭部にフィルター掛かって間違い侵してるのに気付けない」

なんてのは嘘・無明宙のシンジツ。

レントゲンで剥がれて見え透いた魂胆。

大丈夫よ・シュジョウはみんな左うだから。



辞めないでカミサマ

いっつもそうなの

西の果ては晴れてイるのに、コチラが寒いの犯しく無い？



ほら、荒れ地の片隅でミセス・マグダラが嘆いて居るわ。


“どうの瀬、アンな児に巧い事なぞ出来やしない。”


さぁもうお判りカミサマ

円卓に乗ってカミサマ

カミサマなら出来るでしょ

現状に冤罪をカミサマ

円卓の上でジアイして

君臨し続けるの


滑らかな僕にテイサイを

清らかなアノ子にタテマエを


腰が痛いわって笑い合う
青年青女にゲキリンを・！


マぁカミサマ！！

降りないでカミサマ！！

ドコ往く積もり？！



其んな事は一切 アタシが赦さないわ。

アンジェラ(Angela.)

ある日の出来事だった、
ちょっとずつ知ってほしいけど皆に話そうと思ってる

その日は曇りで、世界はもうすぐ雨が降りそうって予感してたみたい
僕はギンガムチェックのニットシャツで出掛けたんだ、
カーキ色のネクタイは何だかつまらないから置いていったよ

ウィルストン通りの喫茶店に入ってカフェオレを頼んだんだ、
何故って今日の天気にぴったりだろう？
でも僕が待ってたのはそれだけじゃなかったみたい


ポプラが揺れて
トラフィックジャムが充満してる
油性のマジックで落書きしてもすぐ取れちゃう毎日だから、
僕はギンガムチェックのニットシャツで出掛けるしかなかったんだ

喫茶店で欲しかったのはミルクとコーヒーじゃなかったみたい


ほら見える？
もうすぐやって来るよ
こっちまで来たら君に紹介しよう
でもまだ到着には程遠い道のりだね


iTunesを開いて
ポップスをリンクさせて
がらくた並みのイヤホンで聴くけど


君には見える？
もうすぐやって来るよ
まだ到着には程遠いけど、
用事が済んだら沢山お話をしてくれるみたい


君には聴こえる？
羽ばたく音
沢山沢山羽ばたく音
誰かはそれが一つも聴こえないらしいんだけど、
君は違うよね

もうすぐこっちにやって来るよ、
まだ用事は済まないみたい


僕がカフェオレに砂糖をティースプーンですくってる間に世界では雨が降りだしたんだって
僕はそんなのちっとも気にならなかった、
だってそうだろう？
目の前のカフェオレしか僕には見えてなかったんだから


もうすぐ用事が済むから、やって来るよ
それが僕には見えるんだ
沢山の羽ばたく音と共に


君は見える？
君は違う？
聴こえないはずはないよね、
だってあんなにもアンジェラはキラキラしてるじゃないか


皆そうなんだよ
皆やって来るんだ
皆やって来て、
キラキラ羽ばたくんだ
用事が済んだら
アンジェラがやって来る
羽ばたく音を立てて


僕にはそれが見えるんだよ。



.

女

女の死体が一台 はみ出している

だからどうこう云うまでもなく

私は

丁寧にそれをクロゼットに閉まった

消える筈もなく

腐る訳でもない

女の骸が生きている

私にそれを教える訳もなく

ただ はみ出していた

開けては

閉ざす

内蔵するその容量の飽和状態の中に

ただ私は

女の死体を閉まっただけだ

女の骸が

生きている

閉ざされたまま

かつて使われたクロゼットの中で

女の骸が

閉ざされたまま

お開き

ご機嫌良う感情
感傷し遊ばす夕方

もう直ぐ晩食の準備です
まな板の上に私は
何を乗せて遣りましょうか

でも一寸、
なぞにか昔の事回想して、
少々お話させて下さいな。


齢17の私は初清らかなおんなごでした
春もうすぐ葬られる五月、
貴方と会話した機会、
善く憶えてゐらっしゃいます。

貴方に惹かれてはいけないと、
よく自制していたのに残念恋情


もっと貴方の傍らに
もっと貴方の内状を


時たまに笑む貴方のその行いは
私を余計に幸にしました。

貴方との経緯、私善く憶えてゐらっしゃいます。

ひょろり、ひらっと探し出し
貴方はいづら、
ふらっ、くらりと願い出し
ねェ、お手手繋いで頂きたいの。


それを昨年、
早や11ヶ月、
まさかまさかの御別れでした


「帳消しにしては呉れないか。」


ねぇ、
貴方私を左様ならするのね
お手手繋げはしませんね

何て消して
貴方は幸福そうなの

貴方の幸せが第一ですもの
良かったわ
上善なのね


殺して遣りたくなりましたけど、
もう好いんです。
もう好いんです。
貴方が幸せなんですもの
殺して遣っては可哀想。


あの女は髪が長く成りました。
可愛い女
貴方にぴったりの
素敵な二人
お似合い過ぎて
嬉しくて笑って仕舞います



貴方達、
殺して遣ろうかと思ったけれど、
私は止めて置いて置きます。
止めて出刃包丁で
お魚を開く事にします。


幸せな二人を願って
お魚を焼くの
可愛い可愛いお魚ちゃんを、
貴方達を遣る換わりに、
殺して遣るから勘弁するわ。




どうか、死ぬまで幸せに成ってね。
さもなきゃ私がサバ射て遣るわ。

滲む介入

青い閃光が飛び火して燃え移る


切り裂かれた木綿の思いは

亡きガラに成って焦げ痕だけを遺した



凍てつく様な心の吐き気を催す胃袋が

氷薄を生んでその一切を破裂した

「ああ、」

「そうか、もう君はいないのか。」


ある朝、柳君がポツリと言った。


午後、私たちは紫の花を買いに行った。
あなた、もう少し若い苗にしません乎。と言っても、
貴方は聞かずに蕾のついた苗を抱いてレジに向かった。



「そうか、もう君はいないのか。」


イスに腰掛けながら前田君が言った。

西に傾く日光が私たちの輪郭を照らす。
あなた、少しお眠りになりはしません乎。


主人は夜中の三時を過た頃、
ようやく仕方のないようにまぶたが閉じられた。

お知らせ・合同詩集「空想」。

善き詩人仲間、古月さんのお誘いで、

この度、合同詩集「空想」に、ここで載せている詩を二篇、

掲載させて頂く事になりました。


内容は彩色豊か、

各詩人さまの独自性溢れるものと成っておりますので、

興味のある方は是非手にとって読んで頂きたいです。


詳細・通信販売の程は古月さんのサイト「人間惨歌」から↓


一度ご覧下さいな。